桜色レヴァリー


桜が散って木々が緑葉になった頃、わたしは全てをなかったことにした。それまでの仕事も辞めて、彼と全く関係のないスーパーでアルバイトを始めた。髪も切ったし洋服もインテリアも全て買い替えてあの頃の残像を全て殺してしまった。

そこでわたしは失敗したことに初めて気付く。
あの桜の木を見ることが出来なくなっていた。
近付くことさえ出来ず、ただただ零れ落ちてきそうな何かを小箱に押し込め記憶の海にへと沈め続けた。
傍にいてさえいれば何時でも逢える、そう信じて桜の元にと願ったのに、近付くことに強い罪悪感と自己嫌悪を抱えるようになった。

夏が過ぎ秋になり、冬が訪れまた桜の季節になる。十夜、百夜と幾度も夜を重ねてもわたしは彼から目を逸し続けた。
それでいいと思った。あんなにも皆は忘れないでと願ったのに、卑怯なわたしは一番に彼を忘れたくて何もなかった振りを続けた。
過去に出来た、そう思っていた。