桜色レヴァリー


「翔ちゃん、ユキくんはずっとここにいてくれてたのかなぁ…?」

「ずっとさくらのそばにいたよ。
それに今もこうして俺がそばにいるのが気に入らなくてキレてるに違いない」  

ふと翔ちゃんの顔を見ると、先程から風と花びらが彼の顔面目掛けて吹いているように見え、頭から何まで花びら塗れになっていた。
それが何だか昔の掛け合いに似ていておかしくて思わず笑う。

「ふふふっ。そういえば前もこんなことあったね」

「全くあいつの嫉妬僻みは死んでも治らんみたいだ」

泣き笑い。そこでもただ、ただ桜は舞うのを止めず、ゆらゆらとわたしを包み込むように降り続いていた。




気付けば季節はまた過ぎて、桜の花も散り青々しく緑の葉が木に芽吹き初夏へと様変わりする。
わたしは街を出ることを辞めて、変わらずあのマンションと通い慣れたスーパーの仕事を続けている。
前と違うのは、毎朝あの木に挨拶をしてから一日を始めるということを始めたこと。
まだ胸の痛みは消えないけれど、いつかきっとそれさえも乗り越えられる。そう思えるようになれたのだ。

「おはよう、ユキくん。今日も行ってくるね」