ホテルの入口で別れ、姉さんを見送った。

姉さんは、もう振り向かなかった。

やっぱり、また泣けてきた。

もう、二度と会えないかも知れないと思うと、本当はつらくてつらくて仕方ないのに、僕は、自分の気持ちに嘘をついて、わざと笑おうとした。


泣きながら笑う。


周りから見たら変質者だ。


『姉さん…絶対、絶対に…幸せに…なって』


僕は、少し歩いて、でも、たまらず、その場に座り込んだ。

ホテルの植え込みのおかげで、人には見られていないだろう。


僕は、声を殺して泣いた。


姉さんへの思いを、ただひたすら涙で流そうとしたんだ。

そんな簡単に流せるわけないのに。

最後の最後まで、情けない、本当に自分が嫌になるな。


『そりゃ、フラレるよ、こんなダメな男』


いっぱい泣いた。

そしたら、不思議と姉さんへの感謝の思いが自然にあふれてきたんだ。


フラレて、こんな気持ちになるなんて… 本当に不思議だ。


なんか、温かい。