『ありがとう、姉さん、今まで僕に優しくしてくれて、本当に感謝してる』

『私こそ。凌馬君がいてくれたおかげで、いっぱい楽しい時間を過ごせたから』

『…姉さん、これからどうするの?』

一番気になっていることだ。

『…あの人と離婚の話し合いをして、いろいろ終わったら、実家の近くに住んで、ゆっくり暮らそうと思う。母も一人だし、近くにいてあげたいしね』

『そっか…でも、都内だし、また会えるかな』

『…そうだね、会えるといいね』

複雑な気持ちだ。


寂しい。


本当にこのままサヨナラしていいのか?

姉さんがいなくなった後の世界で、僕は…

生きていけるのか?

こんな簡単に別れて…

『じゃあね、元気でいてね、凌馬君。本当にありがとう。ありがとうね』

すがりついて、姉さんに


行かないでくれ!


なんて…とても言えなかった。

姉さんが、あまりにも綺麗な優しい笑顔だったから。

もう前に向かって、しっかり踏み出す決意をした姉さんに、僕の情けない姿をさらすことが出来なかったんだ。