『ストーカーって…ううん、大丈夫よ』

ほんの少し笑って言った。

姉さんは、気丈に振る舞っているんだ。

『姉さん、ごめん、兄さんが勝手なことして。本当に兄さんが悪いと思う。でも、姉さんも我慢しないで兄さんに自分の気持ちぶつけたら良かったんじゃない?』

『…』

姉さんは、黙って首を横に何度も振った。

そして、言った。

『いいの、本当に…私、あの人に偉そうに言える立場じゃないし、あの人もいろいろ考えた結果だと思うの、悩んで悩んで…だから、これで良かったと思う』

『そんな…姉さん、物分りよすぎるよ』

姉さんは、少し困った顔になった、そして、またすぐに笑顔で言った。

『私のことは大丈夫だから。凌馬君は本当に好きな人と、いっぱい幸せになって欲しい。あの人と別れても、凌馬君は私にとって大切な人だから。ずっと応援してるから』


切なくて、切なくて、涙が出そうになった。


『…でも、僕が大好きな人は…違う誰かを心から愛しているんだ』


『凌馬君?』


『姉さんだよ、僕は、姉さんのことがずっと好きだったんだ。ずっと大切に思ってきたんだ』


今までの全部の思いが、一気に溢れた。


長い長い時間、僕の中にあった思いが。


今やっと…僕の中から飛び出していったんだ。