僕は、とにかく考えた。

一度、冷静になろうと思った。


そうだ、兄さんに電話してみよう。


僕は、携帯を出して、兄さんに電話をかけた。

『もしもし凌馬?』

早い。

携帯を触ってたんだ。

『兄さん、今どこ?』

『どうした?』

『いや...ごめん、ちょっと...』

何て言ったらいいのか、わからない。

何も考えてなかった。

やっぱり冷静になれてなかった。

『どうしたんだ、凌馬。今、ちょっと会社の人と会ってる』

『そうなんだ。兄さん、今から会えないかな?ちょっと話したいことがあって』

『悪いな、今は...無理かな。今日じゃないとダメか?』

『会社の人って、女の人?』

ストレートに聞いた。

『えっ。あっ、いや、上司だよ。部長。もう飲んでて、出られないかな』

なんで嘘つくんだよ。

兄さん、ついさっきまで、女性といたじゃないか。

部長ってなんだよ、なんなんだよ。


僕は、無性に腹が立った。


『わかった、もういいよ』

『悪いな、凌馬。あっ、そうだ、愛美に言っておくから、相談なら愛美にしてくれないか?あいつ、しっかりしてるから』

なんで?

なんで姉さんに振るんだ。

兄さんは、本当に僕の気持ちに1ミリも気がついてないのか?

『わかったよ、姉さんに電話してみるよ』