『凌馬』

そう呼ぶ声に、ドキッとした。

心臓が止まりそうだった。

『お待たせ。ちょっとバイト長引いた』

ユウだった。

そうだ、約束してたんだ。

でも、頭の中で整理が出来ない。

『彼女、バイト先の山崎沙也加ちゃん。学年は1個下ね』

ユウが紹介してくれた女性のことは、見たことがあった。

確かに、美人だとは思う。

でも、正直、何の興味も湧かない。

『すみません、今日はわざわざ来て頂いて』

彼女は、礼儀正しい挨拶をしてくれた。

2人は、僕の向かいに座った。


でも...僕は、頭の中で、パニックを起こしていた。


兄さんが浮気してる?


あの真面目な兄さんが?


嘘だ...


あの女性は誰なんだ?

姉さんとは全く違うタイプだった。

目の前の2人の会話が何も入って来なかった...