その瞬間、休憩室の入り口からカツン、と小さな足音が響いて、俺はそちらに目をやった。

「……あの、神崎さん、ちょっといいですか?

顔を覗かせたのは彼女で。
もじもじと後ろ手になにかを隠して、俺の元へやってきた。

「お渡ししたいものが」

差し出された彼女の両手のひらには、案の定、高級そうな包装を施した小箱が乗っていて。

英字がプリントされたネイビーの包装紙に、スペシャル感のあるゴールドのリボン。ブランドのロゴ。

俺がひと睨みすると、彼女は真っ赤になってうろたえながら、

「あの、日頃お世話になっているので、感謝を込めて……」

そう言葉に詰まりながら、うるうるとした瞳をこちらに向けたので、思わずため息がこぼれてしまった。