オフィスの外にある休憩室。飲み物や軽食の自販機が数台設置されていて、中央には椅子とテーブルがいくつか並んでいる。

夜の二十二時、この時間になると、休憩室でのんびり時間を潰している社員なんてまずいない。

休むくらいなら、さっさと仕事を片付けて家路につくだろう。

なのに、なぜ俺が缶コーヒー片手にうなだれているのかといえば――。

――さっさと帰れよ! 俺まで帰れねぇじゃねぇか。

そう心の中で呟きながら、缶コーヒーを一気に飲み干した。

彼女が一向にあがろうとしない。

こんな時間までするような急ぎの仕事なんてあるかよ、困ってるならアラートあげろよ、そういう抱え込むところがまだまだ未熟なんだよな、あいつは。
報(ほう)・連(れん)・相(そう)は基本だろ、新人じゃねぇんだから。

とはいえ、こちらからお伺いを立ててやるほど甘やかしてやるつもりはない。

まぁ、黙って待っててやる時点で、相当甘やかしている気もするが……。

あー。置いて帰るか。

重い腰をあげ、空になった缶コーヒーをダストボックスに突っ込んだところで、ふとひとつの考えが頭をよぎる。

――まさか、俺が帰るのを待っているのか……?