「……やっぱり何かあった?」
小さい声で美玲はそう聞いてきたけれど、心当たりなんてないから首を横に振る。
だって昨日はお互い、笑い合って別れたし。
明日の図書委員の仕事、楽しみだって話もした。
他にあるとすれば……。
「……朝の、こと?」
「はい?」
「い、いや、なんでもない」
美玲に独り言を聞き返され、慌てて首を横に振る。
もしかして、これも嫉妬してくれているから?
光原先輩と私がふたりで登校しているのを見て。
それを確認したくても、今の健斗の雰囲気からして話しかけられる状況ではない上に、誰も彼に近づけることすらできなかった。



