すぐ離れる……かと思ったのだが。


「……おい」
「嫌だ、まだこうするの」


まるで仕返しでもするかのように、唯香が俺に抱きついてきた。


「そろそろ帰る時間だぞ」

ふたりとも時間を忘れて寝ていたから、もう外は暗くなっているだろう。


「知ってるけど、あと少し」

ここで許してしまえば、辛いのは俺のほうなのに。

このかわいさには耐えきれず、結局俺は唯香の頭を撫でてそれを受け入れた。


俺はとことん唯香に弱い人間になってしまったようだ。


少しだけ、と言ったはずの唯香は、俺がもう一度『帰るぞ』と言うまでずっとしがみついたままでいた。