俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」

パイの味を褒め、セーラが着ている服や身につけているアクセサリーを褒めちぎる。女はすぐに騙されるからおもしろくない。

もうそろそろいいだろう。俺はセーラの耳元に口を近づけ、俺の計画を言った。

「セーラさんと二人で永遠に暮らしたいんです。脱獄に協力してくれませんか？」

ここでこいつが断ったら、俺はこいつとはすぐに縁を切るつもりだ。脱獄の計画はまた練らなければならないが、別に焦る必要はない。

俺が脱獄する目的は、この場所に嫌気がさしたわけではない。自由になりたいわけでもない。ただ、復讐をしたかったのだ。

リーバス・ヴィンヘルムとクリスタル・モーガンは、俺から自由や権力を奪った。それなのに、自分たちは幸せそうにのろけてやがる。それが許せなかった。

「……私も……ジャックさんと暮らしたい……」

赤くなりながら、セーラが言った。その瞬間、俺は初めて心からの笑顔をこいつに見せたかもしれない。

「やった！それじゃあ、作戦を言いますね」

うっとりとした目で夢を描くセーラに、俺は計画を話した。

「用意してほしいものを言ってもいいですか？」

「はい！」

脱獄が、一歩進んだ。



モリーさんに挨拶をした後、俺とクリスタルは孤児院を出た。あたりは少し、薄暗くなり始めている。キスと話している時間が長かったのだ。

「クリスタル。どこか行きたい店はあるか？お前の行きたい店で食べよう」

俺が隣を歩くクリスタルに言うと、「いいの？」とクリスタルは目を輝かせる。とてもかわいらしい。