「きゃあああ!痴漢!痴漢よぉぉぉぉ!」

女性の甲高い悲鳴が俺の耳に届く。俺はベルと顔を見合わせ、声のする方へ走った。

数人の男女が輪になっている。俺は「大丈夫ですか!?」と全力で走った。

「痴漢と聞こえたので来ました。犯人はどこに逃げたんですか?」

治安がよくなったとはいえ、犯罪がゼロになるわけではない。俺は真面目な表情で被害者であろう女性に話しかける。

「えっ…えっとぉ…」

女性たちは気まずそうな顔を見せ、俺に苦笑いをした。

「刑事さん、ごめんなさい!それは演技なんですよ〜」

俺は「演技?」と首を傾げる。

「学校でお芝居をすることになったんで、それを練習してたんです」

気まずそうに、女性は台本を取り出す。俺は呆れてため息をついた。

「紛らわしいことはやめてください!あと、俺は刑事ではなく交番勤務なんです!」

「ええええええッ!!交番勤務!?」

女性たちは、さっきの悲鳴の数倍はある声量で驚いた。

俺は毎度のことながら頭を抱えた。



女性たちに注意をした後、俺は家へと帰る。家ではもうクリスタルが朝食を作ってくれているはずだ。