その男が現れたのは突然だった。

人の恋人にキスをするなんてありえない。非常識だ。

……しかし、その男とは呼んではならない。

その男は、ノール国の王子なのだから。



時間を朝まで戻そう。この日も、いつも通りの朝だった。

「おはよう、リーバス」

ベルの散歩から帰ってきた俺に、そう言ってクリスタルが抱きついてくる。……かわいい。

「おはよう、クリスタル」

俺は、優しくクリスタルに触れてキスをする。いつもの平和な朝だ。

「もう朝ご飯できてるよ〜」

グリグリと頭を押しつけながら、クリスタルが言う。俺はその頭を撫でながら訊いた。

「そうか、ありがとう。…食べてもいいか?」

「ダメ〜!!」

いたずらっ子のようにクリスタルが笑う。俺は「わかった。ではこちらから頂こう」とクリスタルのように笑い、クリスタルの腰に腕を回して捕まえ、口の中に舌を入れた。

俺の動きに逃げられなかったクリスタルは、驚いた顔を見せている。そんな表情も愛しい。

しばらくキスをした後、俺たちは朝ご飯を食べることにした。ベルにもご飯を食べさせる。