「フローレンス・ダルスですわ」

そう気だるそうに言った彼女を見た刹那、僕の体に電流が流れたのを感じた。

柔らかそうな長い髪、白く美しい肌、ルージュがつけられた唇はとても潤っている。人形のようにきれいな人だと思った。

フローレンスくんはプリマドンナで、煌びやかなドレスに身を包んで歌う。それはまるで、春の女神のように美しい。僕の心に一輪の花が咲いたんだ。

でも、この電流が何かなんてわからなかったんだ。あの時までは……。

ロール国の僕の家がなくなってしまって、僕はフローレンスくんの家に住まわせてもらうことになった。フローレンスくんの家はとても大きい。まるで貴族の屋敷のようだ。

その屋敷は、フローレンスくんらしい装飾的で美しい調度品であふれている。そこで過ごすフローレンスくんは、まるでお姫様みたいだ。

「とてもきれいなお家だね!貴族になったみたいだよ!」

僕がそう言うと、フローレンスくんは苦笑しながら「ファンの人たちからのプレゼントがほとんどですわ」と笑った。やっぱり、美しい花だ。

フローレンスくんは、僕に温かいご飯やおいしいお菓子を作ってくれたり、ラス国での農業の仕事も探してくれた。おかげで、僕は何とかお金を稼いでいる。……フローレンスくんには敵わないけどね。