俺は服のポケットから指輪の入った箱を取り出し、その場に跪く。

「俺の家族になってくれ。…結婚してほしい」

クリスタルは、黙ってしばらく指輪を見つめていた。そしてーーー手を伸ばして箱を閉じた。

「クリスタル?」

予想外の反応だった。クリスタルは、笑って「はい」と言ってくれると思っていた。しかし、目の前のクリスタルは目に涙を浮かべ、俺を睨んでいる。

「……嘘つき」

クリスタルはそう言って、立ち上がる。

「リーバスなんて大嫌い!!私はリーバスの初めての人じゃなかったのに!!初めてなんて嘘ついてさ!!」

クリスタルが何を言っているのかわからない。どうして、クリスタルは怒っているんだ?

「クリスタル、どういうことなんだ?」

俺が首を傾げると、クリスタルは「しらばっくれないでよ!!」とますます怒る。

「ロビンさんに全部聞いたんだから!!」

「ロビン…?」

クリスタルは俺に背を向けて走り去る。俺は追いかけようとして、足が地面に縫い付けられたかのように動けないのに気づいた。

痛い…。怪我をしていないのに、胸が痛む。心が傷ついたのは久々で、その傷が大きいのもわかった。

「……一体どうすれば……」

クリスタルに「大嫌い」と言われたのは初めてで、プロポーズも断られて…。俺の心に土砂降りの雨が降った。



涙が頬をつたう。私は振り返ることも、立ち止まることもせずに、ただひたすら足を動かし続けた。

ごめんなさい、リリー。私はもう何を信じたらいいかわからないよ……。

家には帰れない。どこで過ごせばいいんだろう。

私はすっかり暗くなった街を見つめた。