母の談笑に付き合っていたらあっという間に蛍の光が流れ初めて、私たちは病室を後にした。

「だいちゃんごめんね。」

「いや、咲良のお母さんらしい。変わらないなぁ。それより、俺が彼氏だと勘違いされちゃったな。ごめんな。」

だいちゃんがすまなさそうに言うので、私は首をブンブン振って否定する。

「ううん、違うの。私がこの前、彼氏がいるって言ったから。だから思い込んじゃったんじゃないかな。迷惑かけてごめんなさい。」

ペコリと頭を下げると、頭にふわりと感覚が走った。
え、と思って見上げると、だいちゃんがまた頭をぽんぽんとしてくれている。

「咲良の迷惑なんて今に始まったことじゃないだろ?」

そう言って柔らかく笑うだいちゃんは、あの頃のままで。
ぶわっと懐かしさが走馬灯のようによみがえる。
いつも悲しいことや嫌なことがあると、頭をぽんぽんしてくれていた。
たったそれだけのことなのに、どれだけ安心して救われたかわからない。
やっぱり優しいなぁ。

だいちゃんに触れられた頭を自分でもそっと触る。
温かい何かがまだそこにあるような気がして、私は胸がぎゅっとなった。