頬杖をついていた手が自然に流れて私の頬に触れた

テーブルを挟んだ距離は腕を伸ばせば軽々と越えられる。

固まって動けない

振り払いたいのに、やめてと言いたいのに声が出ない

全ての動作が意図的に止められたみたいに、私と東雲さんの間には無言の時間が過ぎた

頬が熱い。

熱がどんどんと上昇していく

「なぁ、なんか言えよ」

憂いを含んだ唇に釘付けになってしまった

ダメだ。

この空気は危ない。

「、、、っ。、、してっ」

「えっ?なに?」

「離して!って言ってんでしょーが!」

なるべく冷静に小声で拒否した。

どうせまたからかってるだけ。

東雲さんの手はピクッと反応してから、ゆっくりと離れた

「何がしたいのか分かりません。わざわざ仕事だって言ってまで連れ出す理由は何ですか?」

イライラする。

何が言いたいのかはっきりして欲しい。

「知りたいだけ。楢岡 希という人間をな」

「別にこんなことしなくても、一緒に仕事してれば分かるんじゃないですか?」

「仕事上のじゃない。一人の女として、知りたいってことだ」