神様は意地悪だ…。


…彩side…


隠し事がなくなった私たちは、それまで以上に仲が深まったように思う。

待ち合わせは、俊哉の過保護ぶりが発揮され私の家の前になった。


「彩、これ弁当ね。あと、薬」

「ありがとう、お母さん。行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい」


弁当と薬。お母さんは私の前では泣かなくなってしまった。多分、私が泣かないからっていうのと、いないお父さんの分まで頑張るって決めてるんだと思う。

それでも、日に日にお母さんの目の下の隈は濃くなっているし、痩せてきているように思う。

薬は気休めでしかないけど、それでもってお母さんがお医者さんに頼んだのだ。

玄関の扉を開けると俊哉の姿があった。

「よっ」

「俊哉、おはよう」

「おう、おはよ」

俊哉の家からだと遠回りになるのに毎朝私より先にいる俊屋はすごいと思う。

何度か元の集合場所に戻そうと言ったけど、すぐに断られてしまった。

「で、体調は?」

少し歩いて聞かれる質問。
毎朝の日課みたいなもんだけど、これが意外と気まずい。

「今日も絶好調です!」

笑顔で言ったんだけど…

「はぁ、おまえ、やっぱバカだな。んな嘘ばればれだっつーの」

すぐにバレてしまうから気まずいんだよね。

だって、元気って言わないと余計な心配かけちゃうし、それに、今のところ怠さのほかに見当たる不調がないからだ。

「今日もか?」

「うん。ちょっと怠いくらい。」

「んー。怠い。ね」

俊哉は、少し考えるそぶりを見せると私の方を向いて

「ん、了解」

毎朝だけどこれ何してんだろ

「ねぇ、俊哉?その、何考えてるの?」

うまい聞き方がわかんないから支離滅裂な感じになってしまったけど俊哉にはわかったようで

「あーこれ?彩の体調から接し方とかもしもの時の対処法とか考えて整理してんの」

「そんなことしてたの!?」

自分でもしてないようなことをさらっとしている俊哉にはいつも驚かせれてばかりだ。

そういえば、打ち明けたその日にこれまで出た症状聞き出されたのってこのためだったりして…

そんなことを考えてると学校についてしまっていたようだ。


「彩、ぼーとしてどうした?」

「ううん、なんでもない。俊哉すごいなーって思ってただけ」

「おまえなぁ、そういうの平気な顔で言うなよ」

「え、なんで顔赤くさせてるの?」

「見んな!ほら行くぞ」


なんで顔赤くさせたんだろ?
病気って知った今でも前より少し過保護になっただけであとは変わりない。
それでも、私の身体は気づかないうちにどんどん病気に蝕まれていた。



…俊哉side…


昼休み、いつものように彩の席に目を向ける。

ん?

朝は普通だったよな。

今の彩は朝より顔色が悪い。怠いだけって言ってたのに…


「彩?」

「…ん?」


無理して笑ってんの丸わかり。
本当に嘘が下手だな。

「しんどいんだろ?どういう風に?」

「大丈夫だよ」

「大丈夫じゃねぇから、飯食ってねぇんだろうが」

ばつが悪そうな顔をして、口を開く。

「頭、ガンガンするの」

小さい声で訴えてきた症状に眉間にシワが寄るのがわかる。これは、早目に返したほうがいいな。

病状を聞き出した日に色々調べたけど、似た病気しか見つけられなくて、明確なものは該当しなかった。

それでも、頭痛や吐き気、失神この3つはどの病気でも身体が限界だと訴えているサインだと書いてあった。

食欲不振も微熱も彩は自分では気づけないほどに感覚が麻痺しているのかもしれない。

「彩、保健室行くぞ」

そう言って、立ち上がらせようとしたけど、彩は足に力が入らないようで困った顔をこちらに向けて「ごめん」と呟いた。

「頼れって、ほら乗れ」

背中を彩に向ける。彩は躊躇したようだけどそっと体を預けてきた。」

クラスは一瞬静かになったが、すぐにざわざわしだす。

学校では有名なカップルな俺たち

美男美女って言われてたっけ?

ファンクラブがあるんだとか、俺のと彩の

そんな俺たちこんなことをしてればざわついたり、あらぬ噂が立つのもわかる気がするが…

ざわざわした廊下を歩きながら耳元で彩が喋るのがわかった。

「ごめんね、…ありがとう」

言葉の後に寝息が聞こえてきた。

「どういたしまして」

そっと彩をベットに下ろして頭を撫でながら言う。

寝ているはずの彩が少し笑った気がした。