「桜庭も後期は成績一気に落としてるからなぁ……。二人とも遊んでないで真面目に勉強しろよ? AO受けるなら早めに動かないとダメだから、志望校早く決めないと。桜庭にも言っておいて」

「わかりました」

 湊、昨年の前期は試験期間一緒に勉強したから順位上がったって言ってたはずなんだけど……。何となくそんな気はしていたけれど、私達は仲良く去年の後期に成績をおっことしたらしい。

 何冊か資料を手に、瀧先生は「窓は閉めて帰って」と言い残して書道室を出ていった。そして、ぱたんとドアが閉まる音がするや否や、湊がむくりと起き上がった。

「え、起きてたの?」

「起きてたっていうか……、そこまでマジ寝してなかったから」

 この話ぶりからすると、瀧先生の声がした時点で、意識は戻っていた様だ。

「……全然寝足りない」

「まだ寝てていいよ?」

 不満げな渋い顔で目をこする湊を見かねて、「どうぞ」と膝を指したけれど、湊は難色を示した。

「寝れないよ。また人来たらやだし。あー、でも頭いてぇ……。もうちょい寝たかった」

 私の肩に頭を乗せてきた湊は、私が手にしていた本に触れる。

「決めた? 何書くか」

 私が手にしていた万葉集。湊が寝たらしばらく動けなくなるから、今年の文化祭の個人作品のテーマでも決めようかと、眺めていた。