「勝ったらじゃなかったよ? 頑張ったら、だったよね?」

 だよね? と湊に同意を求められた武田は、微かに笑って頷いた。

「あぁ、うん。”頑張ったら”って言ったよ? 俺」

「ほら。俺、頑張ったよね?」

 少し屈んで私の目線に目を合わせつつ、私の手を口元に持っていきつつ、ね? と嬉しそうに目を細めて極上の笑みを浮かべる湊。

 …………ええええええええええええ。

 確かに、確かに頑張ってた。でもご褒美って……ご褒美って何。そもそもご褒美って武田が勝手に言ったのに。っていうか、準決勝ではガチで対戦してたくせになんで結託してるの、この2人。仲が良いのはいい事のはずなのに、全くもって釈然としない。

「そ、そうだね。頑張ったね」

「うん。だから、ご褒美頂戴?」

「え……ええ……なんか、自販機で買ってあげる?」

「んなもん自分で買うよ。物じゃなくていいから、とわからしか貰えないのが欲しいんだけど? 」

 物じゃなく……? それは……つまり……私に何かしろってこと? ご褒美になるような何かって……何?!

「……えーと……。ええと……」

 湊の余裕の笑みにたじたじな私の隣では、肩を震わせて武田が笑っていて、「翔太、笑いすぎだから!」と若菜が武田を窘める声が聞こえてくる。そういう若菜の声も笑っているし、言わずもがな、林くんもお腹を抑えて笑っている。

「放課後までに考えといてね? 何くれるか凄く楽しみにしてるからね?」

 湊は嬉しそうにそう言い残して、決勝戦を応援してくれていたクラスの輪に足を向けた。