次に目を開けた時、湊はいつもの湊に戻っていて、完全にスイッチが切れたのが見て取れた。気だるげに頭を私の肩に乗せたまま、眠たそうな声で言う。
「試合めんどくさ」
準決勝の前とは正反対な言葉を漏らすから返す言葉がない。笑うしかない。
スイッチが入ってるとか、戦闘モードと言われてたのも、こうして比べてみたら納得。確かにさっきまでのは、戦闘モードだ。試合に対する情熱が全然違う。
「しかも吉沢とかさ……。もう、全然やる気しないよ、俺。ここで寝てたら怒られるかな……」
さっきの試合中は、決勝が吉沢くんとの対決でもいいから武田に勝ちたいと思っていたとはずなのに、一旦寝たら欠伸をしながらこの言い様。
「吉沢くん、そんなに凄いの?」
昨日から吉沢くんの話はちょこちょこ聞こえてくるけれど、ことごとく脳筋だとか、怖いとかそんな話ばかりだ。
確かに、さっきの試合前の宣戦布告はちょっと怖かったけど、ちぃちゃんの彼氏さんでもあるのだから、本当はそんなに怖くないんじゃないかと思っているのだけど……。

