「どうって、なにも。少なくとも俺の前で瀬川に手ぇ出す気配なかったから。流石に桜庭とヨリ戻す前になんかしたら、桜庭を瀬川んとこに引きずってでも連れてこようと思ってたけど。もうヨリ戻ったじゃん?
 瀬川が相馬をどういなすのか観察してみんのも面白いかなって」

「お前なぁ……」

「いや、瀬川だし。そこは心配ないでしょ。絶対一途じゃん」

 私の隣にいた林くんが、武田の言葉に吹き出すから、視線を向けると肩を震わせて笑いながら小声で「ごめん。無理」と謝られた。

 林くんの隣にいた若菜は若菜ですごく微妙そうな、それこそ「それ翔太が言うんだ?」と言いたげな表情を浮かべているから、私も余計に微妙な気分になる。

「まぁ、ほら。一応とわの事ちゃんとガードするつもりはあったみたいだし……。桜庭くんとヨリ戻す前に慰められてたら……とわ、危なかったかもしれないし。ね?」

 ね? とそこで同意を求められても、私だって返事に困る。全然フォローになっていない。そう言いたくなる若菜の言葉に、湊が物凄く嫌そうに不満の声を上げた。

「あぁ、もういい。とわ、ちょっとおいで?」