「桜庭、あっちはこのままなら吉沢勝ちそうだぞ?」

 試合は拮抗状態で進んでいて、最後のインターバルで給水に戻ってきた湊に、松田くんが一応伝えておく、ともう一方の準決勝の戦況を伝える。疲れてるなら、吉沢くんとの対戦を避けてもいいのだという意味なのは明らかだった。

「武田に負けんのヤだ」

 子供じみた口調で言い返した湊は、私にボトルを持たせると、コートに向けて歩き出した。その背中に、声をかける。

「湊」

 黄色い歓声が響く分だけ、湊を見ている女の子が居る。きっとさっきの女の子の様に思っている子は沢山居る。そう思うと、怖い。

 それでも、振り返った湊にこの距離でもちゃんと聞こえるように、声を張った。

「頑張ってね」

 弾けんばかりの今日一番の笑顔を見せてくれた湊は、最終ピリオドを全く疲れを見せないプレイでG組を圧倒した。