楽しそうに話す武田と橋浦くんと一緒に改札へ続く階段を降りる途中、通路の端に立ってこちらを見ている湊に気がついた。

「うわ。桜庭居んじゃん」

「機嫌悪そうっていうか、スイッチ入ってんのか? アレ」

 言葉とは裏腹に楽しそうに笑いながら武田と橋浦くんが言う通り、湊は物凄く機嫌が悪そうだった。というか、怒ってる?

 その鋭い湊の視線が私を捉えたのが判る。

 なんで? 私なにかした? ……昨夜、電話中に早々に寝落ちしたから怒ってた? でも、私ちゃんと眠いって言ったし、湊も寝ていいよって言ってたよね?

「私、何かしたかな……」

 何かしたか思い起こしてもこれといって思い当たることがないし、会いたかったのに機嫌が悪いのがちょっとショック。

「瀬川、行きなよ。大丈夫。あいつ、怒ってるわけじゃないから」

 湊の不機嫌の理由を知っているのか、武田はさも面白そうに笑いながら、もう一度「早く行きな」と私を急かした。