湊と一緒に電車に乗ったのは両手で足りるほど。でも、湊になら気兼ねなく掴まれるし、しっかり支えてもらえるし、混んでる時は、守ってもらえてる気がするし、凄く安心する。
なんだろう、朝から湊が妙に恋しい。昨夜、眠いって言ったのに、湊が寝るまで電話しててあげるとか言うから……。きっと湊の声を聴きながら寝たから、湊がやたらと恋しいんだ。
学校の最寄り駅は私達の方が先だから、相馬くんを残して電車を降りる。窓越しに手を振ると背後から「武田」と声が聞こえた。
「おぅ、橋浦。お前さぁ、あの場で言う?」
「いや俺じゃないでしょ。武田が悪い。アレは怒るって」
「おかげで今日楽しくなりそうだから良いけどさ。あ、瀬川。コイツうちの部の橋浦ね」
顔と名前だけは一致していた橋浦くんと小さく会釈を交わす。
理系特進クラスの橋浦くんだけど、一見ガリ勉っぽい訳でもなく、だからと言ってゴールキーパーだったと言われてもそれはそれでしっくり来ないスマートで温和な印象がある。
それを言ったら、湊も普段のちょっとのんびりした性格からするとアタッカーなのが意外なんだけど……。