「どしたの?」

「……擽ったいから、耳元で喋らないで……」

 お願いやめて、と伝えると、湊は楽しげに私の耳元に唇を寄せて、低く囁く。

「ホント素直だよね。俺に弱点申告してくるとかさ」

「……っ」

 逃げようとしても、腰はしっかり湊の腕でホールドされているから逃げれもしない。

「……後で攻めるからね?」

「や、やめようよ……」

「ん、今はやめとく。後でね?」

「…………」

 ……やだこの人。

「とわ いじめるなら早く帰りなさい」

「いじめてないよ、愛でてるよ」

「……こいつイラッとするわ」

 ちぃちゃんと湊は仲がいいのか悪いのかよく分からない。

「あんた、今まで通りに男とつるんでなさいよ。変にとわに構い過ぎないでいいから」

「えー。他の女子どうでもいいけど、とわには構いたい」

「あんまやると とわにとばっちり行くから、程々にしなさいって言ってんの」

 ちぃちゃんにお説教された湊は、渋々私を膝から下ろす。

「じゃあ素直に帰りまーす。とわ、また後でね」

 くしゃりと私の頭を撫でて湊は教室を出ていった。