「……まぁ、ね。でも、あの時はどーしたらいいのか、さっぱりわかんなかったし。弁護士にダメって言われたら、駄目なのかなって思っちゃったけど、あんなの無視してとわに会いに行きゃよかったとも後々散々思ったし。だって、あの人は友香の弁護士であって、俺を守る人じゃなかったわけだし、ね?」

 あの時、湊の立場はすごく微妙だった。正しく言えば、私との示談を成立させるための駒の様に湊を使うために微妙な立場に仕立てあげられた様に、私は感じた。

「あの時ね、私何にも考えられなくなっちゃってて……。湊の事まで全然考えられなくて……ごめんなさい」

「俺もなんも考えられなかったよ。あの後、弁護士やら瀧やらなんか次から次へと人来てさ。何があったか、何回も何回も嫌になるくらい説明して……思い出したくもないや」

「……ごめんなさい」

「謝らないでよ」

「だって……」

「俺からの謝罪は要らないって、とわはちゃんと言ってくれたよ。それなのに、会いに行けなかったのは俺なんだから。俺、言い出したらきりが無いくらい、とわに謝りたい事沢山あるよ。でも、俺に謝らなくていいって、言ってくれたのはとわでしょ? だから……とわも謝らないで」

 ……そう言われても、と私は唇を噛んでしまう。会いに行かなかったのは、私も同じだから。