湊は笑って、懐かしそうにバスケットボールのゴールを見上げた。

「兄貴の背、追い抜いたかも。一気に伸びたの中二の終わり頃からだから、兄貴がいた頃は、とわよりちょっと大きいくらいだったんだよ」

 今はもう私よりも頭一つ以上大きい、180cm近い湊を見上げる。

「誰かに兄貴の話しするの、久しぶりだ」

 湊は少し寂しそうに笑った。

「……言ってたら、帰ってきた」

 え? と視線を道路に向けると、白いコンパクトカーが1台、カーポートへ入ってこようとしているところだった。

 車から降りたのは、ほっそりとした上品な印象の女の人。湊のお母さんなだけあって、綺麗な人だ。

「おかえり」

「湊。友達って、女の子だったの?」

「あぁ、うん。とわ だよ」

 湊の答えにハッとしたように、湊のお母さんは私を見て、ゆっくりと微笑んだ。

「そう……あなたが、とわちゃん。お茶入れるから中に入って頂戴」

 当たり前だけど、湊のお母さんは私を知っているんだ。あの、去年の文化祭の時の……被害者として。