私がそう誤魔化すと、奏史は嫌味などは一つも言わずに答えを言った。

「正解は、紀元前だ」

紀元前……。それがどれほど昔なのか、歴史を知らなくてもわかる。

「そんな時代の中で、数学者の人たちは数式を見つけたんだろ?でもさ、その数式がなかったら未来は発展しなかった。その人たちが行動したから今がある。……そうじゃねえのか?」

奏史が何を言いたいのか、すぐにわかった。今すぐにでも、行動をしろと言うことだ。

「友達に複雑な数式なんていらねえ」

奏史はそう言って、私にイチゴミルクを渡して部室へ戻っていった。

奏史は甘いものが嫌い。そのイチゴミルクは、私の好きなものだった。