それがまた、なんだか泣けてきてしまってポロポロと涙が止まらなかった。


「に、兄さん、」


きっと、私が余計に泣いてしまった事でどうしたらいいかわからないらしく、お兄さんの方に助けを求めてた声にくすっとしてしまう。


「凌平が泣かしたんだからちゃんと話しするまでには泣き止ませてね。
ほら、ついたから。
俺は部屋はいったら珈琲淹れてくるから、お前がリビングに案内しておいて」


ちょうどエレベーターがついたのでそんな事を言うお兄さんに弟さんは「え、俺?ちょ、俺のせいじゃないよな」なんて私に言うもんだから泣きながら笑ってしまう。



「なんだよ、こいつほんとう、どうしていいかわかんねえよ」
  

ほら行くぞなんて言いながらも、私の背をぽんっと軽く触れるその手はとても優しかった。



「さっき兄さんが言ってたけど、ここはエレベーター出て部屋俺らのしかないから。迷う事もねえだろうし部屋番号とか覚えなくていいから」


本当にそこには一つしか部屋の扉がない。

そして、その扉に先ほどと同じようにボタンを押してからカードをかざして部屋の扉を開けていた。本当にセキュリティーが凄いんだなぁと思ってみてると…


「ああ、こういうのも初めてか?まあ一応な、俺らもそれなりに有名だし。会社の書類とかも持って帰ってきて仕事する時もあるからセキュリティーがちゃんとした所じゃねえと危ねえんだ」


私の視線に対してなのか、それともこの空気が耐えられなくてなのかわからないが、そんなふうに早口で言う。