しかも使う時なんて来ないと思うけど…。


「てか30階のビルとか初めて」

「は?嘘だろ。生きててそんくらいあんだろ」


自分でも口に出てると思わなかったので、答えられて吃驚するが、それ以上に弟さんが本気で驚いた顔で私を見つめながらそんな事を言う。


「いや、多分ないです本当に。
地元にないですし、都内に私来たのも正直高校生の頃友達と遊びに行ったときくらいですし」

「まじかよ、天然記念物かよ」

「いや普通にいるでしょ」


つい、すぐに言い返してしまう。


「もしかして、ネズミーランドとかも行った事ねえの?」


可哀相なものでも見るかのようにそんな言葉をかけられる。


「ありますけど、ネズミーランドは都内でもないし、30階のタワマンとは種類が違うと思うけど」

「いや、なんか30階のビルが初めてなんて言うから、お前んとこが田舎すぎてそういうのもねぇのかと思った。あそこに行けてない人生なんて可哀相すぎんだろ」


さすがにそうだったら親父を責めてやってたよなんて真顔で言うもんだから吹き出してしまう。


「は?何?」


「いや、なんか顔に似合わず、いや、似合いますけど。
可愛い事言うなって」


態度には似合わないけど、甘い王子様フェイスはきっとネズミーランドでも似合うだろう。
だけど、それでも面白すぎて一気に肩の力が抜ける。


「なっ、なんだよっ、に、兄さんだって好きだよなっ!てかあそこ嫌いな奴なんていねえだろっ」


少し赤くなってそんな事を言うもんだから益々笑いが止まらなくなった。