「やっぱりティアナはすごいよ」

あれからすぐに王宮に戻ってきた二人はティアナを部屋の前まで送り届け、ユアンはすぐにアレクシスの執務室へ向かい、今しがたの出来事をすべて話していた。

「悔しいけど、馬が迫ってくるのがわかってて、男の子のために飛び出すなんて俺には出来なかった。
クリスティーネ嬢の心ない言葉に対して睨み付ける勇気を兼ね備えてあるのも、一気に市民に受け入れられたのも、ティアナの素質なんだろうね」

国母として、申し分ない器だよ。
と、いつにもないくらい真面目に話すユアンにアレクシスは、そうか。と頷く。

「問題はクリスティーネ嬢だね。
この前の舞踏会でティアナのことは知っていただろうけど、今回のあの態度、全く認めていないって感じだった」

「公爵家に認められなくても構わないがな」

「でも、あの目……なにをするかわからない目だ」

それこそ、自分の目的のためなら相手を傷つけることも厭わないような……。

「……常々からブリュッケル公爵家には不穏な噂があった。
ティアナに害がないよう配慮しよう」

「……ティアナをフライハイト国に連れて帰ってもいいけど?」

「却下だ」

その方が絶対に安全なのにー?とぼやくユアンを放って、アレクシスは窓の外を見た。
窓から見える中庭では、最近よく姿を見せるようになった動物達がじっと執務室の窓を見ているように思えた。