「ティアナさん、姿勢が曲がっています。
美しい姿勢は肩甲骨からですよ?」

【は、はいっ!】

「背筋を伸ばして、骨盤を立てるのです」

骨盤を立てるってなんですか!?と聞きたいが、今は紙とペンを持っていないし、そんなこともわからないのですか!?と怒られそうで怖いので、ティアナはなるべく言われた通りに必死に綺麗に立つ練習をしていた。

婚約発表のユアンとアレクシスの勝負など気になることが多いが、悩んでいたり気が逸れるとすぐに講師の方々に気づかれて怒られるのでティアナは良いのか悪いのか二人の事を全く考える暇がなかった。

「お疲れ様です、ティアナ様。
暫く休憩なさいますか?」

講義が終わった頃にやってきたナタリーは疲労困憊といった様子のティアナに苦笑し、すぐにお茶の用意をしようとするが、その手をティアナに止められた。
不思議に思いナタリーがティアナに視線を寄越すと、ナタリー、骨盤を立てるって何……?と泣きそうな顔で問いかけてきた。

「……そうですね。
では、お教えしますからまずは椅子にお座りください」

それからまた暫く、ティアナはナタリーに基本姿勢を教わるなどしてティアナの一日は立派な淑女になるレッスンに費やされていった。