「ティアナはさ、アレクシスの婚約者になりたい?」

その言葉にティアナの笑顔が消える。
その反応に驚いた様子のユアンは瞬きを繰り返す。

「ティアナ……?」

【私が殿下の婚約者になんて、身分不相応です】

「そうかな?
だったら初めから候補にしないと思うけど?」

【それでも、畏れ多いです】

「それは、王子だから?」

ティアナは答えなかった。
本当は王子などの身分関係なく、ティアナは誰とも結婚する気がなかった。
するべきではないと、そう思っていた。
それを誰かに言うのは憚られて、説明するのも難しく、ティアナは困って微笑んだ。

「……もし、ティアナが王子という身分で萎縮してるなら、俺はその身分を利用するよ」

【え……?】

「王子命令、とでも言えばティアナは従う他ないだろ?
……出来ればそんなことしないでティアナを手に入れたいけどね」

ユアンの言葉にティアナは目を見開く。
何を言われているのかわからないと言った表情だったのか、ユアンは苦笑していた。

「アレクシスのことがまだ好きじゃないなら、俺のことも考えてみて?
みんなが思ってるより、本気だからーー」

一瞬、強い風が吹きティアナの髪が靡く。
そのティアナの髪を一房手に取り口付けると、ユアンは、そろそろ戻ろうか。とティアナに手を差し出した。