ユアンの白馬に乗って、連れてこられたのは王宮からわりと近くにある草原だった。
辺りを見回すと、草むらからひょこひょこと長い耳が揺れていて、たまにつぶらな瞳が此方に来たそうに見ている。

「ティアナは本当に動物に好かれるみたいだね」

ユアンの言葉にティアナは嬉しそうに微笑む。
ティアナにとって、動物達は唯一言葉を交わしあえる大事な友達だった。
そのことで、両親から捨てられることになったとしても、ティアナは動物達が好きだった。

「ねえ、ティアナ。
何で突然あんな教育されるようになったの?」

【詳しくは聞いてません。
せっかく王宮にいるなら、普段身につけられないことを学んでみてはどうかと宰相とナタリーに言われたので……】

どうやらティアナは今行われている教育が婚約者としての教育だと聞いていないようだった。
恐らく、萎縮して逃げ出してしまわないように自信をつけさせてから知らせるつもりなのだろう。とユアンは当たりをつける。

「辛くない?
逃げたいとか思わない?」

ユアンの言葉にティアナは思案するも、すぐに首を振る。

【知らないことを知るのは楽しいです。
出来ないことが出来るようになるのは嬉しいです。
逃げたいとは思いません】

笑顔で答えるティアナの強さに、ユアンは眩しそうに目を細めた。