「と、いうわけでティアナ借りてくよ」

「いきなり来てどういうわけがある」

執務室にノックもなしに入ってきたユアンにアレクシスは眉を潜めるが、ユアンの手の先、連れてこられたらしいティアナが手を繋がれているのに気づき、さらに眉を潜めた。

「だって、この前ティアナと馬に乗る約束したし」

「ティアナはこの後用があったのではないか?」

言われ、ティアナは困ったように頷いた。
ダンスレッスンの他にも歩き方、食事のマナー、国の歴史や成り立ち、文章の書き方などたくさんの講師を招いての教育がティアナを待っていた。

「うわ、なにそれ、そんなにたくさんの事をいきなりさせてるの?
なら、余計に息抜きが必要だ」

「息抜きなら……」

「ティアナ、行こう」

「っ……ユアン!!」

手を引っ張られるままユアンに連れていかれるティアナ。
アレクシスが思わず立ち上がるが、二人はすでに部屋を出ていて追い付けない。

アレクシスは再び椅子に座ると長く息を吐き出した。