「休み……でございますか?」

「ああ、宰相はずいぶん疲れているようだ」

「殿下のせいでございますがね」

「……」

その日のうちにアレクシスは宰相を呼び出し休みを打診したが、帰ってきたのは恨みのこもった言葉だった。

コホン、と一つ咳をするとアレクシスは地図を広げいくつか指を指す。

「候補は此方で絞っておいた。
どこでもいいぞ、どこがいい」

「はぁ……では、こちらに……」

しぶしぶ宰相が指差した場所はフライハイト国に属するクヴェル。
泉があり、観光名所にもなっていて割りと人気らしく、機会があれば行ってみたいと思っていた場所だった。

「フライハイト国か……わかった、ユアンに伝えておこう」

「は、ありがとうございます」

礼をして宰相は執務室を出る。
その疲れ果てた背中を見ながらアレクシスは、早く諦めればいいものを……。と思っていた。

だが、この時は誰も知らなかった。
宰相に出した休みが、選択した場所が、奇跡的にも運命の相手を見つけることになるなどとはーー