「ナタリー、ティアナはどこ?」

アレクシスと別れティアナを探していたユアンは通りがかったナタリーに声をかけると、振り返り様にナタリーは、中庭ですよ。と答えた。

「ありがと。
あ、ねえ、最近ここのみんな、俺に冷たくない?」

「今のところ、ユアン殿下はみなの敵と認識されてますから」

「は?敵?」

なにそれ、意味がわからない。と言うような反応にナタリーは苦笑すると、中庭に着くまでの道程で簡単に説明した。
曰く、ユアンがティアナに明らかに好意を寄せて頻繁に会いに来ていることが原因だとか。

「ユアン殿下がティアナ様のお心を射止め、フライハイト国に連れて帰ってしまうのではないかと心配してるんですよ」

「なるほど、アレクシスが出した条件に当てはまって、さらにはそこまで使用人達からも慕われている……。
いいね、ますますティアナが欲しくなった」

楽しそうなユアンの様子にナタリーは呆れたように肩を竦める。

軽そうに見えるユアンの言葉だけど、本気なのだろう。
宰相に懇願されて王宮に来ただけのティアナにとって、今のところアレクシスとユアン、どちらを選んでもおかしくはない。

……どちらも選ばないかもしれないが、ティアナのことをナタリーも気に入ってるので、出来ればアレクシスを選んでほしいと、そう思いながら晴れ渡る空を見つめた。