「へー?そんなヒト、本当にいるの?」

「いないから宰相が一ヶ月以上も探し回っているんだろう」

「だよねー、そんな女性がいたら俺が婚約したいよ……。
今、こっちもうるさいんだよね。
婚約者見つけろとか、早く世継ぎをとか……」

どの国でも一緒だねー。とユアンが苦笑する。

隣国、フライハイト国は我が国シュトルツ国と国交が盛んで王家の仲もいい。
フライハイト国第一王子のユアンがよく訪れるのがその証拠だが、最近は婚約者探しの話題が多くなっていた。

「ねえ、もしそんな女性見つかったら俺に紹介してよ。
身分も国も問わないからさ」

「いけませんっ!いけませんぞっ!!」

ユアンの言葉に突然執務室を開け放ち、疲れた顔をした宰相がズンズンとやって来る。

「我が国も、婚約者に身分も国も問いません!
この際、年齢も性別も問いませんぞ!?」

「宰相、落ち着いて?
問わないといけない問題があったよ?」

「とにかく、ユアン殿下に紹介している余裕はありませんっ!
王子、見つかったら約束はしっかり守ってもらいますからね!?」

言うだけ言って宰相はまたズンズンと歩いて部屋を出ていく。
呆気にとられた二人は扉を見つめたまま暫く固まっていた。

「……アレクシス、宰相に休みあげたら?」

絶対疲れてるよ……。
ユアンの言葉にアレクシスは小さく頷いた。