一つ目の儀式を終えて数日、ティアナの様子がおかしいとメイドから報告を受けて様子を見に行こうとしたら面倒な奴に会ってしまった。

「殿下、お久しぶりでございますっ!」

ティアナの妹アネッサに話しかけられ嫌々振り向くと、少しつり目がちにじっと見られた。
その後ろにいたナタリーを睨み付けるもナタリーは知らぬ存じぬといった様子で明後日の方向を見ている。

「……ここで何をしている」

「私、どうしても殿下にお伺いしたいことがあって無理に連れてきてもらったんです。
あの休む間もない講義やレッスン、あれは本当に姉さんがこなしていた量なんですか?」

なるほど、ここ数日の過ごし方として以前ティアナに課していたのと同じ講義やレッスンを受けさせていたが、その殺人的な量にアネッサは文句を言いに来たのかと察して思わず溜め息をついた。

「ティアナが婚約者になるためにこなした教育と同じ量をアネッサ嬢にもと伝えている。
あれくらいで音を上げるようならティアナの代わりなどなれないぞ」

「っ……姉さんは声が出ませんから、弱音が吐けるわけありません」

「声が出なければ意思の疎通が出来ないとでも?
方法はいくらでもあるだろう」

「……ですが……」

「教育が終わらなければティアナの代わりにはなれない。
ナタリー用がある、来い」

アネッサの言葉を聞かず前に進むと一歩後ろにナタリーがついて歩く気配がする。
その後ろで、あんな欠陥品が……。と呟く声が聞こえ舌打ちをする。

「殿下、品位が落ちます」

「構うものか。
今俺は機嫌が悪い」

「奇遇ですね、私もです」

歩く速度は徐々に早まりもとの場所、執務室に戻ると扉を閉めたナタリーに向き直った。