「そう?やっぱり俺ってなに着ても似合うよねー」

にこにこ笑うユアンを呆れたまま見下ろすアレクシス。

この二人の仲のいい姿を間近で見ることなんてもう叶わないと思っていただけに、今この時がかけがえない時間のようにも感じていた。

「ティアナさん、ヴォルフのご飯なんですけ……うわっ!殿下方っ!!」

「ちょっと、オスカー?その反応はないんじゃないの?」

遠くの方から走りながらやってきたオスカーの反応にユアンは睨んでいるように目を細めている。

本来ならティアナがフライハイト国に向かう日時と護衛の人数をクリスティーネ達に話した罪で罰せられてもおかしくなかったが、母親のためという事情とティアナの希望もあって今回だけはお咎めなしとなっていた。
だがオスカー自身は後ろめたさからアレクシスとユアンに会ったら萎縮してしまい、その反応を面白がってユアンがからかうのが日常となりつつあった。

「ご、ごめんなさい、殿下方がいらっしゃると思わなくて……」

「別にいいよー。
で、ティアナに用があるんだろ?」

「はい、えっと、ヴォルフのご飯なんですけど、何を用意しても食べてくれないんですよ。
ヴォルフは何を食べるんですか?」

そう聞かれてティアナは困ってしまった。
ヴォルフが食べるもの、それは王宮で用意するには相応しくないものだからだった。