あの日、舞踏会で手を伸ばした先にあったのはアレクシスの手だった。

自国の舞踏会で隣国の王子を選んだことに会場は一瞬しんとなったが、ユアンが誰よりも早く拍手をしてくれたおかげでパラパラと、やがて大きな拍手となり楽団はファンファーレを奏で、フライハイト国王夫妻に正式にアレクシスの婚約者と認めてもらいティアナとアレクシスは祝福に包まれた。

ほんの数週間前の出来事なのに大分昔のことのようにも思え、ティアナは目の前でまだ揉めている二人をじっと見つめた。
舞踏会と言えば気になっていたことを思い出し、手を伸ばすと二人の服をくいくいっと引っ張り注意をこちらに向ける。

【そういえば、舞踏会で見たお二人の衣装。
いつもの王族の服ではなく色違いのシンメトリーになっていましたが?】

「ああ、あれは先の騒動の終息の一貫で仲良しアピールってとこかな?」

仲良しアピール?と首を傾げるとアレクシスが分かりにくい説明だな。とぼやいた。

「あの騒動が切っ掛けでまだ仲違いしているんじゃないかと思っている者達へ、両国の王子は色違いの服をあの大事な舞踏会で着るくらい仲が良いと思わせるためにデザインされた」

【そうなんですね、お二人ともとてもお似合いでしたから】

シンメトリーの衣装を身に付けて並ぶ二人が同時に手を差し出す瞬間はとても格好よくて、あの場でほんの一瞬見惚れてしまったのは誰にも内緒だ。