意識が戻って二日経ち、ようやく熱が下がってベッドに座るまでに体も動かせるようになると紙とペンを持ち、女将さんに話を聞けることになった。

女将さんから聞いたフライハイト国で出回っている話はこうだった。

シュトルツ国を出たティアナは国境近くで盗賊に襲われ崖から滑落。
当時嵐のような雨が降り、濁流となった川にのみこまれ現在も行方不明。
ユアン殿下の婚約者候補でもあったこと、国境越えする前のシュトルツ国内の出来事だったこと、盗賊がシュトルツ国の者だったこともありフライハイト国はシュトルツ国に正式な抗議文を送り責任を追求し始めた。
それに対しシュトルツ国は襲われた時に捕らえた人物の素性と自供により、ブリュッケル公爵家を断罪することを公表した。

「これがティアナの意識がなかった一週間の出来事さね」

女将さんの話を聞きティアナは大きく頷く。
フライハイト国がシュトルツ国に抗議文を送ることも、盗賊に扮した荒くれ者と執事を捕らえてブリュッケル公爵家を断罪の舞台にあげるのも、全ては計画通りだった。

ただ一つ、ティアナがこのまま表舞台から姿を消してしまったら国民の、特に平民のシュトルツ国への不信感が残ってしまい、それが原因で二国間の友好もヒビが入りかねない。

なんとしてでも早く、予定通りユアンのもとへ行かないと……。

ティアナは持っていた紙にペンを走らせ女将さんに見せた。