「殿下!早くフライハイト国に救援要請を……!」

「ならない」

焦った宰相の言葉を遮るように言うと重く息をつき、再び口を開いた。

「ティアナが無事であろうとなかろうと、フライハイト国はその安否を知らせることなく、シュトルツ国は捜索をしてはいけない。
ティアナが必ず守るよう国王とユアンと交わした約束事だ」

「そんな……あぁ……」

私が連れてきたばかりに……。と宰相は膝を折りその場に崩れ落ちた。
ナタリーは視線を反らし足元を睨み、己の腕を強く握っているようだった。

「我々の力が及ばず……申し訳ありません……」

何度謝っても気が済まないのか、隊長は何度も頭を下げている。

「気にするな。
お前は言われた通りの仕事をした……よくやったな」

「殿下……」

執務室の窓から空を見ると、昨日と違って晴れ渡った空が広がっていた。
そこでは大きな鳥が高く鳴き声を上げながら滑空している。

ーー殿下、これから話すことは“もしも”の時の話です。
どうかお聞きください。

ティアナの言葉を不意に思いだしたアレクシスは三人に暫しの休息を言い与えて執務室を出る。
もしかしたら最悪の事態も想定していたのかもしれないティアナの言葉に従い、彼女の部屋へと向かった。