シュトルツ国の王宮とフライハイト国の王宮は馬車で五、六時間ほどかかるらしく、途中三度の休憩を入れて進むことになった。

御者を含めて三人ほどの護衛と共に二度目の休憩にと火を起こし、軽い食事を食べていたときに頭上で大きな鳥が高い声で何度か鳴いたのを聞き、近くに置いていたペンを手に取り持っていた紙に滑らせた。

トントンと近くに座っていた少数護衛の隊長の腕を軽く叩き書いた紙を見せる。

“ここを出発して七キロほど先の国境近くで、盗賊に扮したブリュッケル公爵家に雇われた者達が潜んでいます。
クリスティーネ様の執事さんもいらっしゃるようですよ”

驚き目を見開く隊長にティアナは自分の唇に人差し指を当て一度頷いた。
隊長は残りの二人にもその紙を回し、最後の者は火に紙をくべた。
一同で顔を見合わせると、無言で頷きあった。

ふと空を見ると大分雲行きが怪しくなってきていて、鳥達がピィピィ鳴いている。

嵐がくるーー。

ティアナは眉を潜めるが、隊長に促されて再び馬車に戻った。