「ティアナ様、準備はよろしいですか?」

“はい、大丈夫です”

昼になり馬車の用意も終わり護衛の準備も整った。
ティアナは見送りに来てくれたナタリー、アレクシスと数人の使用人と動物達に、行ってきます。と口を動かし頭を下げた。

「ティアナ様、どうかお気をつけて。
必ず戻ってきてくださいね」

【ありがとう、ナタリー】

ナタリーと一度強く握手をするとティアナはそのまま馬車に乗り込む。
中庭の方を見るとオスカーが顔色悪く馬車を見つめているのがわかった。

昨日のうちにオスカーがクリスティーネの執事にティアナがフライハイト国に少数の護衛で戻るのを話していたのは動物達が確認済みだった。
その執事が荒くれ者達を指示し道中で馬車を襲う算段になっていることも……。

全く怖いわけではない。
上手くいかなければ襲われた瞬間、最悪の場合は命を奪うことも厭わないと言う話も出ていたらしい。

ぎゅっと服の中に入れた付けてもらったばかりのネックレスを握りしめ、真っ直ぐ前を見つめる。

きっと大丈夫。
アレクシスのくれた御守りが護ってくれるはずだ。

ゆっくりと馬車はフライハイト国に向かって動き出す。
これが反撃の一手になるはずだ。