「ティアナ、見送りに来てくれたの?」

ティアナが見送りに行くと馬の準備が終わったらしいユアンが手綱を手に門を出ようとしていたところで、ティアナは頷いて応えると、お気をつけて。と口を動かした。

「……それは俺の台詞だよ」

眉を下げ困ったように微笑むユアンはティアナの手をそっと掬いとり、口付けた。
驚き目を見開くとユアンは、もう動揺しないんだね。と呟いた。

【え……?】

「ティアナ、フライハイト国で待ってる。
必ず来るんだよ」

【はい、必ず。
待っていてくださいね】

「ああ、待ってる。
気をつけて、無事を祈ってるよ」

颯爽と馬に跨がりそのまま走り出すユアンは、小さな時に絵本で見た白馬の王子様そのもののようで格好よく見えた。
ティアナはその背中が見えなくなるまで見つめてから王宮に向かって歩き始める。

準備をしなくてはいけないことがあった。
暫く戻ってくることのない、この王宮にあてがわれた自室に入ると椅子に座り、紙にペンを走らせた。