「あっ、ほら二人が来たよ」
琴菜は顔の涙をぬぐう。
「お待たせ」
「どこいく?」
「ドーナツでも軽く食う?中途半端な時間だし」
「じゃあ行こう」
「あっという間に卒業だったねー、あたしなんか二年だったから本当に早かった」
「俊はいつお父さんの方へ行くんだ?」
「そうだな、三月の第三週くらいに行って向こうで原付とか、寝具とか買いにいくかな」
「ちゃんと帰ってきてね」
「うん、時々琴菜も来いよ」
「あれ、琴菜ちゃんしか誘ってくれないんだー」
「別にそういうんじゃないけど向こうのほうは遊ぶとこあまりないし」
「こいつらは二人でいれたら場所はどこでもいいんだよ」
「まあな、いいホテル探しておくな、琴菜」
「そんな目的だけでは行きません!」
四人は店を出て別れる。
「琴菜は短大でサークル入るのか?」
「俊が平日いないから入ろうかなー、俊は?」
「まだ全然考えてない、バイトするかもなー」
「変な女に騙されないでね」
「お前もな、もう俺がいないんだからホイホイついていくんじゃねーぞ」
「はーい」
「じゃあ、明日な」
「ん」
そして、俊は父親の元へ行き4月を迎えた。
久しぶりに栞ちゃんと会う。
「久しぶり~」
「栞ちゃんも元気だった?」
「うん、大学のほうはどう?」
「うん、同じ高校からの子がいたからその子達と一緒にいる、医療事務とれるから女子が多いよ」
「うちの専門学校は歯科衛生士だからほぼ女子よ」
「栞ちゃんが歯科衛生士なんて合うのか合わないのか(笑)」
「うん、就職難だしね、それにお父さんが実は歯科医なんだよね、開業はしてないんだけど」
「へぇー、そうなんだー、家建てる時に開業しなかったの?」
「お母さんが嫌がったの、やっぱりリスク高いし、自分も今の仕事好きだから辞めたくないみたいでね、家と仕事は別がいいって、前のお父さんは自営業だったから嫌がったみたい、あたしはあんまり記憶がないけど」
「しっかりしてる、栞ちゃんはお母さんに似たんだね」
「顔はお父さんみたいだけどね、あっそうそう、これ見て」
パンフレットを見せる。
「合同体育祭?」
「うん、うちの専門学校色々な専門学校を手広くしてるから各コースの学生が一同に集まって春にあるらしい」
「俊くんの学校も系列一緒だからこの日はこっちに来るよ、聞いてない?」
「うん聞いてない、4月終わりの平日かー、会えないから言わないのかなー」
「琴菜ちゃんは授業だもんね、連絡は来てるの?」
「バイトを始めたからバイトの日は来ない」
「俊くんのことだから毎日かかさず来てるのかと思ってた、淳基くんでも毎日一言はくるのに」
琴菜は黙ってしまった。



