俊は琴菜の家に走っていく。
ピンポーン
「はい、あらちょっと待ってね」
ドアが開く。
「お邪魔します、琴菜いますか?」
「いるわよ」
「いい?」
「どうぞ(笑)」
部屋をノックする。
「琴菜入るよ」
布団にもぐっていた。
「琴菜、ごめんな、本当にごめん、聞いて」
何も言葉は帰ってこなかった。
「昨日、いとこの泉姉ちゃんが来てて母さんと飲んでたんだよ、中学の時琴菜と同じ高校に行きたいから家庭教師してもらってたの知ってるだろ?で、朝起きたら布団に入って隣で寝てたんだよ」
「何で俊の布団に入らなきゃいけないのよ」
「知らないけど起きたらいたんだから俺がびっくりだよ、失恋して昨日飲み過ぎたみたいで話をしたらすぐ帰っていったけどその時にキスされちまって逃げれなかった、ごめん」
「失恋したって俊にキスするのは違うと思う」
「後で母さんが言ってた、飲みすぎるとキス魔になるって」
「そんなのズルい、酔っ払ったせいにするなんて」
「ごめん、次から気をつける、琴菜布団から出てきてお願いだから」
ノックがある。
「はい、俊くん、飲み物置いとくわね」
「あっすいません」
「琴菜がすねてるんでしょ」
「いえ、俺が悪いので」
「何で?」
「昨日いとこにキスされて口紅つけられてて琴菜が朝、口紅ついてたから怒っちゃいました、俺が逃げられなかったから悪いんです」
「まあ、それはそれは」
「でも昔、琴菜もいとこのお兄ちゃんにキスしてたわよ」
「えっ」
琴菜は布団から顔を出す。
「何それ、覚えてないよ」
「親戚で集まった時に、一年生だったかしら、おばあちゃんの家でよく遊んで貰ってた葵くんにしてたわよ唇に」
「葵くんは覚えてる、二つ違いでおばあちゃんの家ではよく遊んだ」
「葵くんもびっくりしてたわよー、ファーストキスだったでしょうね(笑)」
「キスした記憶はないよ」
「一年生だもの、琴菜は俊くんがファーストキスだもんね、あなた達は保育園でも家でも俊くんがキスしてたから琴菜も葵くんに遊んでもらってありがとうってキスしたのよ、習慣て怖いわ~ってお父さんと話したもん」
「まあ、いつまでもケンカしてないで早く仲直りしなさいよ、琴菜もヤキモチも程々にしないと俊くんに嫌われるわよ」
「嫌われる?」
「そりゃそうよ、これから社会人になって色んな人と出会うのにその度にヤキモチ妬かれたら男は逃げるよ」
「そうなの?」
俊のほうを見てうるうるする。
「それは、わからないけど……」
「お母さん、今日お父さん会社に迎えに行かないといけないからちょっと出てくるね、ケンカは次の日に持ち越さない」
母親は部屋から出ていった。



